受けるだけならタダと言われても交通費と言う名の受験費用がかかるので決してタダではない。大体蹴る前提で受けるなんて他の受験生や雄英に失礼すぎる。そういうわけで雄英の入試は受けなかった。
　春先は教師の仕事が忙しいらしく一緒にご飯へ行くことはほとんどなかった。無かったけど3日に1回は「ねむい」「はらへった」とLimeがくる。既読がつくからメールよりLimeの方が合理的だとかなんとかで意外にもイレイザーヘッドはLimeを結構使っているらしい。つか使い方がTwitterかよ。
>桜木ヒーロー科合格、いえーい、ぱちぱち
>そんな低いところ受けてたのか
　うわはっきりと言ったぞ。いいのか教師。いいのかヒーロー。…いいのか…。
>ヒント：金
>それは答えだ
>多少環境左右されるかもですけど、その先へ行けるかどうか最終的には己次第っすから
　どれだけ良い環境でも怠っていれば望むものになれない。何もない場所でも出来ることはあるし、トップヒーローの多くは雄英出身かもしれないけど全員がそうであるわけではない。そもそもヒーローで確定するかどうかも怪しいんだから。
>まあがんばれ、何かあれば話は聞いてやる
宮＜結構気に入られてるのね、貴女＞
　隣でLimeを覗き見ていた宮野さんがトーク内容を見ていった。確かに気に入られている感じはする。
「ヒーロー飽和社会って言うくらいだし、ヒーローの1人くらい知り合いにいた方が都合良さそうだしありがたいね」
宮＜一教師としてはちょっとどうなのかとは思うけどね＞
「私と会ってるときは教師としてじゃないらしいよ。そう言われると困るよね」
　ああ言われたときはちょっとぎくりとした。そういうこと言わんで欲しい。
宮＜…貴女、まさか彼のこと好きなの？＞
「分かんないから困ってんだよ。うーん…」
　一度三十路を超えた残念な脳みそは、恋愛感情に清純な思考よりリアル思考へ行ってしまう。特に相手は恐らく三十路近辺だ。ますますそう考えてしまうのも仕方ないと思うんだ。
　愛のある性行為できるかどうか
「…想像できない…」
宮＜…何を想像してるのよ…＞
　つかそもそも恋より愛が先に来る時点でアウトよな。15にして愛とか流石に重い。
宮＜貴女が彼をどう思うかはともかく、貴女が男性を恋愛感情で見ていると知れたら…荒れるわね＞
「誰が知って誰が荒れるん」
宮＜私たちが知ったら私たちが荒れるわ＞
「宮野さん今聞いちゃってるじゃん」
宮＜貴女の勘違いであることを切実に願ってるわ＞
「……さようでございますか」
　この前降谷が「渡来が思ってる以上に渡来を考えている」と言っていたが、どうやらあれは本当らしい。くすぐったいようなむず痒いような…ちょっと腹立たしいような。
　みんなは私の為と動いてくれるけど、私はみんなの為に動けない。今も、昔も。
　前世のことを考えても仕方ない。そんで霊として今存在している彼らに八つ当たりしても仕方ない。私は私の人生を、彼らと共に歩むだけだ。