楽観主義

 どうやらゼロの執行人が近いみたい。エッジオブオーシャンの様子がテレビにちょくちょく出るようになったし、東京サミットがーってニュースも見かける。ニュースを見ながらノーパソに映るNorを見ていた。つかその辺の一般人がNAZUにアクセスできるだけで事案だろ。NAZUってNASAのことだよな…この世界のセキュリティまじザル。実際はテロじゃないけどIoTを使った事件だったなあれ。姉はそういったもの持ってないから大丈夫か。私もそこにはお金かけてないから、スマホでピッな家電は無い。家電にお金かけるならパソコンとかソフトに金掛けたい。
 ぼけーっとニュースを流し見てたら緊急速報が入った。
―たった今入ったニュースです。東京サミットが行われるエッジオブオーシャンで爆発が起きました―
「ふぁっ」
 いままさにー始まってるのねー!!あっほんとだ!哀ちゃんが言ってた通り映ってるよ!チラッと!…大丈夫なんかこれ…。組織的に。
 ノーパソだけじゃだめだな、寝室兼作業場の隣の部屋に入りデスクトップを起動する。まさか映画の話を見れるとはな―。他の原作の話とか映画の話はほぼスルーしたけど、まあ所謂救済的なことはしたけど、けどけど、降谷さんの協力者カッコハテナな今の状態、触れる程度には関わりそうな?…関わらんな、うん。
 会場の監視カメラの映像をちょちょっと漁る。流石降谷さん、そう見えるところを歩いていなかった。んじゃあ大丈夫かな。
 爆発が起きてから数時間が経った。そういえば今回って人死なないんじゃなかったっけ。殺人事件は無かったはず。映画の話で人が死なないのってこれだけなんじゃ…あったっけ他に。うーんと思い出そうとしてたら電話が来た。渦中の人物降谷さーん!!
「僕です」
 イケボダイレクトアタック!!!!
「へあい!どうしました?」
「盗聴と盗撮の出来るスマホアプリ作れるか?アイコンが出ないタイプで、リアルタイムで内容が得られるもの」
 …What?あれ、降谷さん今サミット会場にいる?てかいたんだよね、ケガしてんじゃないの?
「盗聴器作るよりは簡単に作れますけど…」
「すぐに作ってくれ。でき次第すぐに僕に連絡をよろしく」
「へ?…って切れてるし…」
 盗聴器の1つや2つくらい降谷さん余裕で持ってるんじゃ…。態々なんでアプリに…。………ん?あれ、もしかしてこれ、コナンに仕掛けるやぁつ?うぇっ私が作るの!?
 博士の解析で入ってるってバレたやつだよね。ってことは解析で見えるようにしなきゃいけないのか。表向きは見えないようにして中身を解析したら分かるようにする。盗聴盗撮をリアルタイムで別の場所に送るからそれなりに充電は食う、GPS…つけたらもっとひどいからそこはオンオフ変えれるようにすればいいか…。あれ、スマホってどこの機種だ。それによって言語も開発機材も変わるぞ。コナンってどっちだっけ。直ぐに切るくらいだから今忙しいんだろうなーって思いながら降谷さんに折り返してみた。意外に出ましたよ。
「なんです?」
「さっき言ったアプリを入れる予定の端末はAndroidです?」
「ああ、Androidです。機種は確かEXPERIKA」
「OSのバージョンは分かります?」
「すまない、そこまでは分からない」
「いえ、大丈夫です。EXPERIKAまで分かれば私も持ってるのでデバッグできます。承知致しました」
 通話を切る。機種変更で不要になったスマホは手元にまだある。機種変の時に不要になったスマホを見せに渡せば1万円安くなるとか言われたけど、これは丁度いいデバッグ機だ。
「ひっさびさにJavaJavaすっかー!!」
 んがーと背伸びしてデスクトップに噛り付いた。


 長所は集中力、短所は集中しすぎて時間を忘れる。デバッグ確認もできて時計を見れば余裕で日付が変わっていた。日付変わって、1時間後には家を出ないと会社に間に合わない時間だった。
「やっべ風呂も入ってねえ!!」
 降谷さんにはとりあえず「いつ渡せばいいでしょうか?」とだけメールを送っておいた。私服OKな会社だからまだマシだ。今日着る服を適当にひっつかんでシャワーを浴びる。速攻出て着替えて髪をタオルで巻き基礎化粧だけする。ドライヤーで髪を乾かしてたらインターホンが鳴った。誰やん。テレビドアホン見れば、降谷さーん!!!
「はい!すんません急いでるんでそのまま入ってきてください!鍵開けとくんで!」
 返事を待たずオートロック解除のボタンを押す。玄関のカギを予め開けておいて改めてスマホを確認すれば、降谷さんから「そっちに向かう」と来ていた。風呂入ってたわ。アプリ取りに来たのか、やっべじゃあUSBかなんかに入れたほうがいいんじゃね。シャットダウンしたデスクトップを再度起動する。がちゃっと玄関のドアが開く音が聞こえた。
「急に悪い」
「急ぎなら仕方ないっすよ、えっとあー、USB?メモカー?何に入れると都合いいです?」
「…これから仕事か」
「そろっと出ないと間に合わないんで、一応使い方とかは、あーもういいやこのノーパソで盗聴内容と盗撮内容リアルタイムで見れるようにしてあるんで、これ持ってっちゃってください。降谷さんなら見れば分かると思うんで大丈夫だと思います」
 インストールして入れるためには一度相手のスマホを手に入れないといけない。コナンは風見さんによってぶっさすだけだったから、そういうのがあるといいんだけど生憎持ってない。
「これに入れてくれ」
 すっと渡されたのは風見さんがコナンのスマホに入れた時に使ってたあれ。
「TypeCってことはここ半年以内に発売されたスマホっすね」
「差したらすぐにスマホに入るようにしてほしい」
「抜かりはないです」
 渡された端末をデスクトップに繋げてデータの転送を始める。ノーパソのパスワードも解除しておいた。
「ということは、そういう使われ方をするって分かってたんだな」
「盗聴だの盗撮だの言ってる時点でアウトっすからね。クラウドに置いといてスマホに落とすやり方だと、一度はそのスマホを自分の手で操作しないといけない。最悪そのクラウドがバレたら色々面倒ですから。物理的に刺して入れたほうがまだ足がつきづらい。やる人の手腕が問われますけどね」
 転送100%。それをしっかり見て媒体をデスクトップから外した。
「1度でも別の端末に入ったらその時点でここからアプリは消えます。アプリは端末に入った時点で通話機能とカメラ機能をジャックして、このノーパソにデータを流します。GPSは電池を食うのでオンオフスイッチし気にしてますが、そこは盗聴盗撮と一緒にノーパソから任意に切り替えられますんで」
「助かる、ありがとう」
「アプリからそのノーパソに辿り着かないように対応済みです。ノーパソ立ち上げたら勝手にアプリ関連起動するんで、あああ時間!何か不具合あったら連絡くださいメールは見るようにするんで!」
 カバンに財布と別のノーパソを入れる。鍵をひっつかんで、クローゼットについている鏡で自分を見る。うん、身だしなみ大丈夫。身だしなみ気にする職場でもないけど社会人として一応。時計を見ればギリギリ間に合う時間内。
「よし、間に合う」
「東條さんって…」
「何すか?」
「…いや、何でもないよ」
 言いかけて止めるのやめて欲しいわー。気になるじゃん、でも時間も時間だし気にしないように部屋を出た。降谷さんも出たけど、流石に一緒にマンションから出るのはちょっとねってことで降谷さんは非常階段から降りて行った。この階から降りる降谷さんマジ凄い。

(東條さん、仕事との時とか手伝ってくれる時は普通なのに、どうして普段あんなに残念何だか…)