ポケットに入らないモンスター

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 学級委員長決めの投票では飯田に入れた。THE☆委員長!って感じするから。しかし本人は意外にも自分に入れなかったらしく「俺に入れてくれた1票の期待に応えられないなんて…!」と悔しそうに顔を歪めていた。「自分に入れてないんだ」だとか「やりたがってたのに何やってんだあいつ」という声に賛同する。ほんと何やってるんだ…?
 お昼はほとんどが学食に行くけど、ピカチュウとカービィがいる私は弁当を持ってきて教室で食べる。どうせなら教室に残ってる人と食べようと思い声をかけた。
「青山、一緒に食べない?」
「君も学食いかないのかい?いいよ☆」
 尾白の席を勝手に借りて弁当を広げる。カービィにはミニトマト詰め合わせ、ピカチュウはサラダとミニトマトの詰め合わせ。私は普通のお弁当。
「トマトばかりだね☆」
「この子らトマトすっごい好きなんだよね。青山は…なんかフランスっぽいね」
 ドヤ顔でお弁当の中身を教えてくれたがカタカナが並んで全然分からなかった。学食にもフランス料理あるじゃんと聞いたら、あっちのは口が合わないから家から持参することにしたと言う。
「あー、なるほど、そういうのあるよね。日本人に合うようなフランス料理的な感じだったん?」
「本場の味といえばそうだけど、お子様な感じがしたかな☆」
「ターゲットが私ら高校生だからそうしたのかもねー」
 独特なキャラクターな青山だけど会話は普通に続く。多分あれだ、この子所謂率先的に自己主張しないタイプの「かまちょ」さん。割と嫌いじゃないよ。
 我が道を征くマイペース青山と独特な会話をしていると非常ベルが鳴り響いた。あからさまに肩をびくりと揺らした青山に「落ち着きなよ」と宥める。今朝から立ち直ったピカチュウも動揺せず「ピカ?」と冷静だ。
「今朝のマスコミが入り込んだのかな」
「許可証の無い人間が入ろうとすると、侵入者防止ゲートが動くと思うよ☆簡単に入れないんじゃないかな☆」
「誰か個性使って無理やり入ったかもよー?あんだけごちゃごちゃしてたら、誰が使ったかすぐ分からんだろうし。とはいえ逃げろって放送だから逃げるかー」
 弁当をそのままに席を立つ。私の定位置に着こうとするピカチュウとカービィの口元をティッシュで拭い、ゴミ箱へそのティッシュをいれ青山と教室を出た。…青山、怯えすぎ。
 非常口方面へ歩いていく途中で先輩らしき人に声をかけられた。そして非常ベルはマスコミが侵入したことで鳴り響いたと態々教えてくれた。非常口へ向かう私たちが誤報を知らないかもしれないと判断して態々教えてくれたという。お礼を言って再び教室へ戻った。
「君の言う通りだったね☆」
「つか個性使った時点でヴィランじゃね。不法侵入罪」
「それね☆」
 非常用ベルのせいかいつもよりみんな教室に戻ってくるのが遅かった。そして午後に委員長に続いて他の委員会も決めるHRが始まったのだが…。緑谷の推薦で学級委員長が飯田になった。
「…そこは八百万さんじゃないんだ…」
 本人が辞退したなら繰り上がりじゃないんだ…。認められた委員長の推薦だからいいのか…?
 非常口飯田、と切島たちが呼んでるけど、さっき一体何があったんだ。