ポケットに入らないモンスター
4
戦闘訓練の内容は2人ずつペアを組み、ヒーローチームとヴィランチームに分かれ、ヴィランチームは核を守りながら20分耐久かヒーロー確保、ヒーローチームは核に触れるかヴィラン確保するというもの。うん、このクラス21人だね。
「先生!ペアでということですがこのクラスは21人!1人余ります!」
「うん、そうだね!1人は全員の訓練が終わった後余力のあるペアと戦闘してもらうよ!」
「そこだけ1vs2ってこと?」
「うわーぜってー不利じゃん」
「Plus Ultraさ!といってもその1人は既に決めてあるんだけどね、渡世少女!君だ!」
「うぇ、マジか」
「君の個性を考えると、ペアを組んだ時そのペアがとても有利になってしまうからね!」
「そっか、2匹既にいるもんな」
「実質3vs2じゃん」
やろうと思えばもっと出せますとか言わなんどこ…。つかまあ今更1人で戦うことに何の抵抗もない。こちとらもっと大人数相手したことあるんだ。響香がどんまいという視線を向けてきた。
「なんか、頑張れ」
「人数分かってるし最後ってことは相手の個性も分かる。有利過ぎて1人であることはハンデにならないさ」
「超ポジティブじゃん」
そんなこんなで戦闘訓練は始まった。一番最初の緑谷・お茶子vs飯田・爆豪。なんかめっさ重い。爆豪頭ぶっ飛んでんな。チビだから後ろだとモニターがよく見えない。響香に一言言って前の方によった。偶然隣に八百万さんが並ぶ。
「真面目にやってんの飯田だけじゃね…」
「全くですわね」
設定と己の役割をきちんと理解しているのは飯田だけだ。爆豪はやたら緑谷に突っかかるし、緑谷もご丁寧に爆豪を相手にしている。お茶子はモニター越しに見ても分かるくらい注意力が散漫している。飯田は核のある部屋を掃除しだした。お茶子対策だな、私も同じ立場ならそうする。お茶子が飯田を見つけ様子を伺っているが気が緩んでいるのがよく分かる。爆豪の容赦ない攻撃に赤い髪の…確か切島が「やべぇって!」とオールマイトに止めるよう叫んでる。
「緑谷…あの位置、まさか…」
飯田たちがいる部屋と緑谷達がいる部屋は丁度立て並びだ。建物をぶっ壊した爆豪はマイナス点もらってるし、緑谷もそれ聞いてるはずだよな。つかヴィランが守ってんの核だぞ?分かって…ないなこれは。予想通りのことをしてくれた緑谷とお茶子。当然対応できなかった飯田が驚いている間にオールマイトが「ヒーローチーム!WIIIIIIIN!」と勝敗を下した。
「ねぇわ…」
「ないですわ」
「ピカ?」
「ほよ?」
八百万さんと2人ため息を吐いた。つかまた緑谷は怪我したのね。
緑谷は負傷したから保健室へ直行。戻って来た爆豪、お茶子、飯田を交え講評が行われた。
「今戦のベストは飯田少年だけどな!」
「なな!?」
「勝ったお茶子ちゃんか緑谷ちゃんじゃないの?」
「なんでだろうなぁ~?分かる人!」
「はい、オールマイト先生。それは飯田さんが一番状況設定に順応していたから。爆豪さんの行動は戦闘を見た限り私怨丸出しの独断。そして先ほど先生も仰っていた通り屋内での大規模攻撃は愚策…緑谷さんも同様の理由ですね。麗日さんは中盤の気の緩み、そして最後の攻撃が乱暴すぎたこと。相手への対策をこなし且つ、“人質”のことをきちんと想定していたからこそ最後の対応に送れた。ヒーローチームの勝ちは『訓練だ』という甘えから生じた反則のようなものですわ」
「つか緑谷も爆豪も、互いのことをよく知ってんならペアに情報共有すべきでしょ。個性どころか相手の性格まで分かってるなんてこれほど有利なデータ現場じゃ基本有り得んし。八百万さんも言ってたけど緑谷はビルに核があるってのが抜けてた。ヴィランに勝つだけがヒーローじゃないでしょうよ、また個性で怪我したし。ワーストは緑谷だな」
「うっわきっつ」
「…ま、まぁ飯田少年も硬すぎる部分もあったわけだが…まぁ…正解だ…くぅ…!」
「常に下学上達!一意専心に励まねばトップヒーローになどなれませんので!」
オールマイトなんか悔しそうだな。あれか、全部言われた的な感じか。八百万さんに同調するかのようにピカチュウとカービィがピカピカペポペポ言っている。2匹は「よく分からないけど凄い」と言ってる。
さて重たい第1戦に反して第2戦は恐ろしく速くあっさり終わった。半身凍ってるからそうだろうとは思ってたし昨日のテストでも使ってたから、その威力と強力さを改めて痛感する。ああいう風に氷張ることできるんだな。カービィは暑いのも寒いのも平気だけどピカチュウがそうじゃない。ピカピィと震えるピカチュウをぎゅっと抱きしめた。
その後の戦闘は重くもあっさりでもなく順調に?進んだ。戦闘が終わり講評を繰り返して愈々自分の版になった。相手が誰であっても攻略方法は一先ずたてられた。あとは私がヒーローサイドかヴィランサイドかによる。
「さて最後の戦闘だ!渡世少女は…ヴィラン役!ヒーローは…Bチームだ!」
「はーい」
モニタールームを出てビルに向かう。背後から「また同じパターンになるんじゃね?」とか「小さいのいるっていってもあれ相手でどうするんだろうな」とか聞こえた。舐めたらあかんで、こっちには星を救った戦士と歴戦の猛者がいるんだから。