転生転生また転生

「……はい?」
 今住んでいる家から雄英高校へは電車で通わなければならない。だったら雄英高校の近くに家を作ろうとか言いだした両親に「いやいや家作るくらいならせめて部屋借りたいですそういうお金の使い方は良くないと思います」と全力で止めた。そしたら丁度最近建てたばかりのマンションがあるから、そこにしようと即決定した。絶対学生が1人で暮らすようなマンションじゃない…。掃除めんどいなって思ってたらコンシェルジュつけようかとか言い出したので掃除頑張ることにした。
 でだ、話はそれで終わったと思った。
「いや、ちょっとまとう、ステイ、ステイだ母さん」
 とんでもない爆弾が投下された。
「婚約…?って言った…?」
「そう!ヒーロー科ってことは、ヒーロー目指すんでしょ?立派な貴女がヒーローになったときに貴女に寄り添ってくれる生涯の伴侶が必要なのよ!」
「突拍子ねえなおい!まだ15!来月16だけども!!」
「もう結婚できる年じゃない!」
「法律的にはそうだけども!!」
「流石にお見合い結婚は、ちょっと酷かなぁって、恋愛結婚してほしいもの」
「うんそれで婚約っておかしいよね」
「だから、高校通ってる間お互いを知るためにも結婚を前提に同棲をしたらいいんじゃないかって!」
「ぶっ飛びすぎだから!!!」
「もしお互い性格とか価値観が合わなければ破棄すればいいし、そのまま卒業と共にゴールインでも!お母さんとしてはそっちの方が安心かな!」
「話聞こう!!??」
「お父さんとももう話し合ってあるの!」
「おとうさああああん!!??」
 現在アメリカに出張中の父。この場になんでいない!!というか婚姻!!!
 家は大概金持ちだし両親は所謂権力者だ。父は国際ヒーロー機構…ICPOのヒーロー版のようなもの…の副理事兼ヒーロー公安委員会のトップ、母は全世界にいくつもの支店を持つ超有名なサポート会社の代表。父方の祖父は警視庁の重役、祖母は貿易会社の御令嬢、母方の祖父は全世界に支店を持つ有名ホテルの会長で祖母は某有名ブランドの元社長だ。恐ろしい程金と権力に満ち溢れた家計。だからこそ、金持ちとしての経験しかない両親は「“世間”と言われる“一般的で”“庶民的な”生活をしてみたい!」と普通の家を建てて私を普通の幼稚園、小中学校に通わせてくれたのだ。しかし今回雄英に行くのと、そもそも多忙な両親が家にいることの方が少ないので今住んでいる家は取り壊すらしい。…簡単に家建てて取り壊す時点で普通じゃないって気づくわけないよな…。
 あくまで普通を目指す両親を思って、出久や勝己は私の家事情を知らない、金持ちだってことは知ってる。親同士仲が良いってのは幼稚園のときに意気投合したのがきっかけ。2人のご両親も知らないんじゃないかなぁ…。
 じゃない、話が逸れた。
「お母さんね、椎名には家のこと気にしないで恋愛して、結婚してほしいって思ってたの。でもやっぱり私もお父さんも、お爺様やお婆様の事情を考えるとそれも難しいかなって」
「お母さん…」
「椎名昔から賢くてしっかりしてたし、ヒーロー目指すからどんどん強くなると思うわ。でもね、椎名の旦那さんが椎名を任せられる人じゃないと。家のことよく理解していて、椎名のことも理解してくれる、そう言う人がいいの。椎名がお嫁さんになるのか、お婿さんになるかは分からないけど、どちらを選んでもきっと旦那さんは大変だと思うわ」
 権力者の家に来ることも、権力者の嫁が来ることも、一般家庭の男性なら相当気苦労するだろう。下手すりゃ旦那さんの方が誘拐されたり脅されたりなんてこともあり得る。輪廻転生の個性を考えると子供を作るつもりはやはりないが、結婚くらいはしてもいいかなって思う。しかし「子供は作らないけど結婚したい」なんて人によってはNGでしょ。事実婚したことはあるけど結婚をちゃんとしたことは無かった。
「勿論、いきなり言われても困惑するわよね。今すぐに返事しなくていいわ。でも婚約のこと頭に入れておいてほしいの」
「期限…とかあるの?」
「そうねぇ…。早い方がいいけどそればっかり頭に行って学校生活が疎かになっちゃいけないから、長く見積もっても12月までにしておきましょうか」
 いやそもそも婚約の時点で色々…………。
(好きにやらせてくれた両親も爺ちゃん祖母ちゃんも最高だけど、そうしたほうがお母さんたち的にはホッとするのかなぁ…)
 こんな恐ろしい家系で寧ろこれまで自由に出来たほうがおかしいのだ。そう考えると両親を安心させるためにも両親が安心して任せられる人と婚約したほうがいいのかもしれない。権力の塊の家系だ、相手のことを徹底的に調べ上げ来るに違いない。まず変な人は来ない。だから文字通り性格や価値観が一致するかどうかになると思う。
(…いや流石に幼馴染ーズに言うわけにはいかねぇよなぁ…そもそもうちの事情知らないし…)
 出久のことも悩んでるのにここにきて爆弾的な悩みができてしまった。