うちの従兄弟がクソ可愛い
6歳
なんか変な力に目覚めてから1年。自分の力をそれなりに理解し、怖がるだけの生活から一変、悪霊カッコ仮に対抗するようになった。リアルのグロやホラーがマジでダメなもんで、何とか泣くのを堪えても精神に引っ張られるのも相まって、結局最後はヒロ君に泣きついていた。お陰様で頑張れるようにはなったと思う。
というか今更気付いたんだよ。従姉弟の苗字が“宮地”で名前が“清志”と“裕也”…親がバスケ大好き…。
(宮地サンじゃないスか!!)
きゅるんと大きなおめめで「ママといっしょ」を楽しそうに見ている宮地兄弟。その何と愛らしく可愛らしいことか!!!
「おかあさん!!!かめら!かめら!!かめらない!?」
「カメラ―?ちゃっちいデジカメなら確か…」
ごそごそと棚を漁る母にはやく!と急かす。はいはいと棚の奥から掘り出したのは、シルバーの小さなデジカメだった。受け取ると説明も受けずボタンを確認してすぐさまテレビに向かい兄弟を連射する。
「かっ…かわいい…!!このかわいささつじんきゅう!!」
これがあのタッパ190の大男になるなんて…でかくなっても童顔ハニーフェイスなんだけどさ!!
「そーきゅーと!!」
「瑠依ちゃんは2人が好きねぇ」
「どこでその言葉覚えてくるんだろう…」
宮地両親と家の両親の声をBGMに、テレビからカメラに気付き興味津々の2人をパシャパシャ撮りまくる。
「きよもやりたい!」
「ゆうもーゆうもー!」
「ぶふぁっ!!!かわいすぎてしんぞうがいたい」
自分のことをそれぞれ「きよ」「ゆう」と呼ぶ兄弟の可愛さ…語彙力の貧困と可愛さ過多で心がしんどい。
この感情をヒロ君と共有したい。ヒロ君のご両親が来年から東都らしく、ヒロ君も高校は東都の方に行くんだって。家はそのままにしておいて年に一度か二度だけ帰ってこれたら来るみたいな感じになるらしい。つまりヒロ君とは来年以降めっっっったに会えない。受験勉強で疲弊しているだろうヒロ君へスマイル0円を提供したい。これは疲れ取れるで。
「きよしくん、ゆうやくん、ヒロくんとこいこ!」
「ひろ?だれー?」
「きんじょのお兄ちゃん!」
カメラを清志君に持たせたまま、清志君と裕也君をつれて隣の家に行く。車一台がやっとの道路を渡ってヒロ君宅の庭を横切りピンポンを押した。
「ひーろーくーんー!!みてー!!」
2階から「はーいー」といつもの返事が降ってくる。中からバタバタと階段を降りる音が聞こえ、玄関の扉が開いた。
「あれ、お友達?」
「いとこー!きよしくんと、ゆうやくん!」
目線を合わせてこんにちはと挨拶をしてきたヒロ君に対し、清志君と裕也君はピャッと私の後ろに隠れた。ぎゅっと服が掴まれる感覚がする。
「は?かわいいかよふざけんな」
「瑠依ちゃん真顔でそれはちょっと怖いよ」
ヒロ君はポケットから携帯を取ると、パシャっと私ごと撮った。
「お母さんけいゆでいまのください」
「後で送っておくね」
「るいー…」
清志君の方を振り返ると、置いてけぼりを食らったかのようにしょぼんと私を見上げてくる。裕也君も兄の真似をして「るいー」と拙く私を呼ぶ。
「癒しと興奮を同時に提供する器用さと心の汚らわしさが浄化されるような表情仕草挙動嗚呼この世に生まれてきてくれてありがとうそして私の前に現れてくれてありがとう最大限の感謝と喜びをここに表明する」
「瑠依ちゃん興奮しすぎると一周回って流暢になるよね」
「可愛くない?え?可愛いでしょ?は?うちの従姉弟可愛すぎかよ」
「そんでキレるよね」
初めは中々人見知りで慣れなかった宮地兄弟だったが、ヒロ君の子ども懐きテクニックに敵うわけがない。あっという間に仲良くなった。慣れてない間ずっと私の服を掴んでたから終始私は真顔だった。