強くてニューゲーム
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だから怪我の手当てが一番大変なんだって。わき腹を貫通ではなくかすっただけだったから良かったけど、左腕と同じでわき腹も傷跡が残りそうだ。
赤井さんがNOCとバレても逃げ延びるのが原作での話。しかし半分の確率で逃げられず死んでしまう。それは私をいつの間にか見られたことがやはり原因だった。2回目に赤井さんの死体を見たのはそういうわけと。いつの間にか見られるのなら寧ろ監視したれと、諸伏さんのNOCバレから1年間赤井さんのストーカーをした。死体の印象が強すぎて、赤井さんに対しては生きているのが見えるだけで、嬉しい…と言うより安堵?「ああ、赤井さん、生きてる」ってしみじみと思ってしまうのだ。甲斐甲斐しいストーキングのおかげで、赤井さんは無事逃げおおせた。降谷さんや諸伏さん含めて私を探している姿を見るのはちょっとした癒しだったり。うんうん、その考察違うんだなぁ。
伊達さんを殺さないようにするのは誰よりも簡単だった。強制イベント?固定イベント?ってくらい必ず同じ時間同じ日同じ場所で同じ状況で起きるからだ。伊達さんがあの場所に行かないようにする。事故を起こした男は別の場所で事故を起こすから1回痛い目見ればいい。その別の場所で死ぬのは事故を起こした男だけなんだけどさ。
伊達さんが張っていたのは強盗殺人を起こした犯人たち。その犯人たちを伊達さんの運命の日の前に捕えておいた。ありとあらゆる証拠を気絶している犯人たちの周りにバラまき、もし起きてもいいようにガムテープで動きを封じた。それをした人物があの時と同じ人物ではと予想した萩原さんと松田さん、伊達さんは中々頭がいいと言うか想像力が逞しいと言うか。正しいところがまた何とも言えない。
フラグは回収した。キールが自身の父親を殺していたのは知らなかった。でもそれが4年前の話らしいから、原作通りなのだろう。なんだか久々に原作に辿り着いた気がする。原作に入れたのは片手に入るかどうかくらいの回数だからあまり知識がない。宮野明美の死はどうしたもんか。どうせ赤井さんは日本にいるわけだし、知れば勝手に動くっしょ。そう思って赤井さんの携帯に彼女の計画と組織の意向を送った。見知らぬ人間から送られたらビビるよね。変な気を回さなくていいよう末尾に「死神より」って書いてみた。3年前の人物と同一だと分かれば、まだマシかなという私なりの配慮。
結果的に宮野明美は死ななかった。しかし意識不明の重体。赤井さん頑張ってたよ。赤井さん1人だと流石に大変かなぁ~と思って私も微力ながら手助けした。ジンとウォッカに「お前らのことバレてっから」ってのが伝わるよう、赤井さんのいる位置とは正反対の位置からバキュンバキュン。ジンたちがとんずらして赤井さんがスコープで私の方見ようとしたから、スコープはお釈迦にした。後になって申し訳なくなったから使ったライフルと新しいスコープを赤井さんのところに郵送しといた。プレゼント送ったら宮野さん嫉妬しちゃうかな、大目に見てよ。
数少ない原作中に起きた予期せぬ出来事の一つに、「小さくなった宮野志保が工藤邸まで辿り着かない」「辿り着くが阿笠博士が気付かずそのまま死ぬ」というのがある。工藤新一と宮野志保がアポトキシンで死ぬことはないらしい。今私の目の前には、何とか組織の施設から脱出したものの逃亡が思いの外早く気付かれて思うように動けない、小さな宮野志保がいる。時期に似合わずスキーにでも行くかのような格好をしている私はさぞ不審者にしか見えないだろう。そういえば過去何度か組織に入ったけど、彼女にはどんなふうに匂うんだろう。寒さで震えてるのか怯えて震えているのか分からんから判断つかないけど。
とりあえず早く行ってもらわないと彼女が死んでしまう。中身は18歳なんだっけ、子どもちっせーと思いながら彼女を抱き上げる。暴れるなって。悪いようにはしないから。
正規ルートで行くのは「ここにおるで!」って言ってるようなもん。カンストした気がするパルクールで工藤邸の近くを目指す。流石の彼女もここで暴れて落ちたら死ぬってのが分かったみたいで、移動中は大人しくしてくれてた。「あなたは誰なの!」「どこへつれてくつもり!?」とか叫んでた気がする。ポンポンと背中叩いておいた。
阿笠博士が見つけるまでがワンセット。ということで工藤邸の前で彼女を下ろした後は一度その場から去り近くで見守っていた。このコートはもう使えないかなぁ。雨でびしょ濡れだし、宮野志保に触られたからバレるかも。そんなことでバレるもんか?いやいや念には念を。
もう駄目だぁってところで阿笠博士は無事登場して、宮野志保を保護してくれた。あー良かった良かった。
毛利蘭 or 妃弁護士の死亡フラグは回収済みだし、摩天楼でもコナンが目的地までスムーズに辿り着けるよう色々細工したからこそ彼は灰原哀に無事会えた。松田さんたちと降谷さんたちが私のことを未だに探している。たまに降谷さん周辺を探っても、やはり彼が私を思い出している様子はない。ちょっと残念ではある。
繰り返した結果得たのか分からんけど、先見の明的なもので死亡フラグ疑惑はさっさと回収しつつ何とか順調だ。赤井秀一が死んだふりをするという作戦は一番の肝かもしれない。ここで本当に死んでしまったら問題だ。
ちょっとずつ分かってきたが、キーパーソンが死ぬにあたって私を認める以外にあるのは「本当は死ぬはずではなかったのに死んでしまった」という偶然パターンだ。毛利蘭とも妃弁護士とも面識がない段階で逆上男は殺人を仕掛けたし、灰原哀も本来工藤邸に辿り着くはずなのに死ぬこともあった。偶然パターンは必ずあるとは断言しづらいから、これを防ぐのが難しい。今回の赤井秀一の死の偽装は成功するといいんだが…。
崖の上から下を見下ろす。計画通りであればキールが一人でここにきてヘッドショットをかますはず。
(おー…原作見てないから詳しく知らんけど、噂の死体すり替えってあんな感じだったんだ)
キールと赤井による華麗なるすり替えを双眼鏡で眺める。頭から血を流した赤井が平然と立ってるのはちょっと笑える。
滞りなく話は進んだ。赤井はキールと別れ、工藤有希子が運転する車に乗り込んだ。ここから工藤邸へ向かい変装するって計画だったかな。助手席にコナンが乗ってるのが見える。
ルートを割り出していると、そのルート上にジンとウォッカが乗る車があるのが分かった。うっそだろお前らさっさとどっかいけよ。計算上お見合いするな。あいつらが先にどっか行くまで工藤車を足止めするか。
彼女の運転技術なら轢かずに止まることもできると信じて、多少の怪我覚悟で車の前に躍り出た。例によってスキーへ行くかのような格好、自称死神スタイル。甲高く鳴り響くブレーキ音、予想通り素晴らしい運転技術のお陰で当たらずすれすれのところで止まった。
ここで赤井が出るのは危険だと彼らは分かっている筈だが、意外にも車から降りたのは赤井だった。コナンも勿論降りている。肌の出る隙間は最小限に抑えたから、麻酔銃はそう簡単に当たらない…と信じてる。赤井は車内で血糊を拭きとったようで、服に血糊は付いているけど頭は血糊がついていなかった。
近づく赤井達に会わせるよう後ろへ下がる。3年前一度やられている赤井だから、そう簡単に逃げられないかなぁ。流石の私もこの格好で人通りの多いところへは行けない。見つかって不味いのはどちらかというと向こう。私もある意味不味いけど。
「3年ぶりだな」
カチャと懐から銃を取り出した。いやいやこんなところで物騒なもん出すなよ。コナンも赤井の行動に流石に目を見張った。
「どこまで知っているのか知らんが、大人しくついてきてもらおうか」
5分、欲張るなら10分、時間を稼げれば組織とのエンカウントは無い。さてどうしたもんか。
「赤井さん、この人は一体…」
「さあな。こちらの事情も組織の事情も随分詳しいようでな。この3年間、我々が総出で探しているのに何も見つからない、自称死神だ」
「死神…?自称?」
そういえばFBIと公安は、表向きは協力体制じゃないんだっけ。それこそベルモット対策で極一部の人間だけが連携を取っている。主にジェイムズさん、赤井さん、降谷さんに諸伏さん。諸伏さんは警察庁へ異動になったんだよね。FBIと公安が秘密裏に協力体制にあるから、組織の壊滅も案外早いかもしれない。組織壊滅時にアポトキシンのデータが必ず入手できるとは限らない。もし入手できなかったら工藤新一の人生はある意味終わったも同然。アポトキシンのデータは予め入手済みだから、彼らが戻れないということは今回はない筈。そこまで行ければの話だけど。
「今ここにいるということは、ボウヤの計画は全て知っていたということだろう?3年前のことを考えると組織の人間とは思えない…が、はっきりしない以上信用はできん。お前は白か、黒か」
サイレンサーついてないのに発砲するほど馬鹿じゃない。あれはギミックで大元は背後のコナン。麻酔銃をこちらに向け、いつでも撃てるようにしている。赤井さんに視線を向けるように仕向けコナンを視界から外そうとしているわけだ。ヘッドライトで私と赤井さんの周辺は明るい。コナンの命中率ならマフラーとゴーグルのわずかな隙間に当たりそうだな…お~怖っ。
この場でコナンを動揺させる手段は一つ。あと数分でとんずらできそうだし。左腕を身体の前に持っていき、左手首がコナンに見えるよう素肌を露わにした。その傷跡に気付かない探偵じゃない。
「!その傷跡は、まさかあの時の!」
コナンの左腕が下がる。赤井さんの気が少し逸れた。その隙を見逃すわけないじゃん?瞬時に間合いを詰め、マフラーにこっそりつけてある変声器を通して一つ情報をあげた。
「組織は宮野明美が死んだと判断している」
「!!」
はい赤井さんしっかり隙ができましたー。赤井さんの横をすり抜け、コナンの横もすり抜け走っていく。バックで追いかけてこないっしょ。緊急時に限って探してる人物が見つかった時の心情が気になるね。私がその立場なら「クソヤローなんでこんな時に!」って暴言吐く気がする。
キールもバーボンも宮野姉妹と接点がない。つまりキールとバーボンが宮野明美について聞くのは中々に不自然。ということで2人に彼女の情報が運良く下りてこない限り、組織としてどう判断しているかNOC側は知る術がない。
彼女を撃った本人が「あの出血量で生きてるわけがねえ」って断言したんだからね。そんなんだからドジンジンだなんて言われるんだぞ?